不動産投資における2つの「利回り」
不動産投資における「利回り」と言えば、「表面利回り」や「実質利回り」を思い浮かべる方が多いと思いますが、今回は税理士の立場から、同じ「表面利回り」でも、投資家と地主では考え方が大きく異なるという点についてご紹介します。
投資家から見た表面利回り
投資家の場合、土地と建物の取得価格に対して、年間どの程度の賃料収入が得られるかで利回りを判断します。そのため、利回りが高く、なおかつ土地・建物の資産価値が高い物件が理想的です。
ただし、一般的には利回りが高い(価格が安い)物件ほど資産価値が低いなど、利回りと資産価値はトレードオフの関係にあります。
地主・ハウスメーカーから見た表面利回り
一方、地主の場合は、もともと所有している土地に建物を建築するため、土地の取得費用はかかりません。そのため、「建物の建築費に対して、どの程度の賃料収入が得られるか」という考え方で利回りを計算することになります。
私自身、税理士として経験が浅い頃は、ハウスメーカーが提案する利回りが投資家目線より高い事に疑問を感じていました。しかし、これは土地代を含めずに計算しているためだと分かりました。
大手ハウスメーカーの建物は決して安くありません。投資家が土地を購入し、その上に同じ建物を建築すると、採算が合わないケースもあります。
地主と投資家では目的が違う
では、大手ハウスメーカーの建物代が高すぎるのか、提案が悪いのかというと、必ずしもそうとも限りません。地主にとっては、先祖代々の土地を守りながら、長期的に安定した賃貸経営を行うことが重要です。
土地をすでに所有しているため、建物の借入返済額を上回る賃料収入を確保できれば、十分に成立するケースがあります。また、相続時には不動産として評価されることで、相続税対策につながる場合もあります。
一方、投資家は土地と建物を購入し、将来の売却まで含めて投資判断を行います。そのため、利回りが低い物件では投資として成立しにくくなります。
投資家にとって魅力的な物件とは
投資家にとって一つの狙い目となるのが、地主に相続が発生した後に売却される不動産です。相続人が「不動産を所有することに興味がない」「借入をしたくない」などの理由から売却するケースがあります。こうした物件には、ハウスメーカーが建築した比較的高品質な建物が建っていることもあり、投資家からすると魅力的な物件となります。
しかし、このような物件が一般市場に出てくることは多くありません。不動産業者が買い取って転売したり、現金購入が可能な投資家に売却されたりするためです。
まとめ
税理士として不動産賃貸業の相談を受けていると、このように同じ「利回り」でも、立場や目的によって意味が大きく変わることを実感します。
不動産投資を検討する際には、利回りの数字だけを見るのではなく、土地を含めた総投資額、資産価値、借入、そして将来の売却まで含めて判断することが重要です。
