相続時精算課税と暦年課税の改正(その2)

 前回の続きになります。相続時精算課税と暦年課税について、おおまかな有利不利判定を行います。

No項目判定
【1】財産を年110万円以上、相続人に贈与するつもりはない精算課税有利
【2】相続させる主な財産は、相続人と同居している自宅である暦年課税有利
【3】受贈者は孫である暦年課税有利
【4】親の余命が7年以内である精算課税有利
【5】親の相続財産が多額である暦年課税有利

 【1】について、暦年課税は死亡年7年以内の贈与は相続税に加算される、それに対して精算課税

  はいつまでの加算されない(非課税)のため、精算課税が有利になります。

 【2】について、精算課税により財産を贈与すると、相続時に小規模宅地等の特例(80%評価減)

  の適用を受ける事が出来なくなるため、暦年課税が有利になります。

 【3】について、受贈者の孫は推定相続人でない(遺贈を受けていない場合、生命保険の受取人に

  なっていない場合等、相続税の対象になっている場合を除く)、ため相続税が発生しないため、

  暦年贈与が有利になります。

 【4】について、死亡年7年以内の贈与は相続財産に加算されるので、精算課税が有利になります。

  なお、(平均)余命とは、各年齢で、後何年生きられるかを表した数字で、厚生労働省から令和

  4年に公表されたものによれば、男性は83歳、女性は87歳の時に平均余命が7年程度になります。

 (平均寿命は0歳の時に何歳まで生きられるかを表した数字になります。)

 【5】については、ケースバイケースになりますが、暦年贈与は複数の相続人に対して、110万円

  以上の贈与(仮に310万円の贈与)を行った場合でも、10%の税率で財産を移転させる事が可

  能です(贈与税は20万円で、実質税率は6%程度になります)。これを10年も続ければ、かな

  り財産を移転させる事が出来ます。一方精算課税は最終的には110万円控除した後の金額を相続

  税に加算する必要があるので、例えば5億円超の財産を所有している場合には、暦年課税により

  財産を移転させた方が有利になる場合が多いと思われます。

 最後に、複数人の贈与者から贈与を受けた場合の取扱いについて検討します。

精算課税・暦年贈与ともに複数の贈与者から贈与を受ける場合、基礎控除は贈与額に応じて按分される

事になるので、複数の贈与者から贈与を受ける場合には両制度を併用して、例えば祖父からは精算課税

により贈与、父からは暦年課税により贈与を受ける事により、年間最大で220万円の基礎控除を受ける

事が可能になります。

 

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